[特集]次世代車開発にイケイケの韓国ヒュンダイ 世界4位のEV車、BTS起用の水素車、そして四足歩行車…?

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[特集]次世代車開発にイケイケの韓国ヒュンダイ 世界4位のEV車、BTS起用の水素車、そして四足歩行車…?

ヒュンダイ自動車が、ソフトバンクとの間で、ソフトバンク傘下のロボット開発企業であるボストン・ダイナミクスを買収する方向で協議していることが明らかになった。

買収価格は最大10億ドル(約1050億円)とされる。ボストン・ダイナミクスは四足歩行型ロボットで有名な「SPOT(スポット)」などの製品を持つ。90年代初めにMITからスピンオフした企業であり、2013年にグーグルに買収された後、17年にソフトバンク傘下となった。

「SPOT」はその一種ユニークなルックスで一躍有名になった。コロナ下の無観客で始まったソフトバンクホークスの試合では、この四足歩行「SPOT」と人間型の「Pepper」君がユニフォームや帽子を被って客席に並び、ホークスの疑似応援団を務め、何とも言えない印象を作り出したことは記憶に新しい。
 

(写真:ソフトバンクホークスの応援に動員された「SPOT」と「Pepper」君=ソフトバンク)

 
ヒュンダイ自動車は韓国プロ野球からは(幸いにも)撤退している。仮にボストン・ダイナミクス買収が成功した際には、ヒュンダイの韓国プロサッカーチーム・蔚山現代の試合に「SPOT」が応援に駆り出されるかは不明だが、それが買収の主目的でないのは確かだ。
 

自動車企業がなぜロボット?

ヒュンダイ自動車は、韓国の自動車メーカーだが、実はロボット事業にも熱心に取り組んでいる。

ヒュンダイ自動車グループのチョン・ウィソン会長は、2020年の新年の辞で、自動車の技術革新に加え、ロボット、PAV(Personal Air Vehicle、パーソナル飛行体)をベースにした都心の航空モビリティ、スマートシティなどの幅広い領域で人間中心のスマート移動ソリューションを提供することができる新たな技術の開発と事業を積極的に推進するという計画を明らかにした。

また、ジョン・ウィソン会長は先月、自らの会長就任メッセージとして、「ロボット、UAM、スマートシティのような想像上の未来の姿をより迅速に実現させ、人類に一次元高い生活の経験を提供したい」と話した。

ヒュンダイのロボット分野のビジョンを凝縮したのが、昨年1月米CES 2019で公開された四足歩行のコンセプトカー「エレベート」(Elevate)」だ。
 

(画像:ヒュンダイ自動車の四足歩行コンセプトカー「エレベート」=同社提供)

 
「エレベート」はヒュンダイのロボットと電気自動車の技術が適用され、人気アニメ「トランスフォーマー」よろしく、4つのロボットの足(車輪)を動かして、山岳地帯など既存の移動手段ではアクセスが困難な地域でも活用できるとする乗り物だ。

ちなみに「エレベート」の歩行時の歩行速度は約5km / hであり、1.5mの高さの壁を越えることも可能である。もちろん一般車のように一般道路を走ることもできる。「トランスフォーマー」のように戦うことは出来ないが、ちょっとしたピンチなら逃れられそうだ。

ヒュンダイは昨年9月にウェアラブルロボットの「ベックス」(VEX)を開発した。 VEXは、製造業や建設業、物流などの現場で、長時間の上を向いて、腕を持ち上げ作業する労働者の筋骨格系疾患を軽減し、作業効率を高めるために開発された。

ヒュンダイはまた、人工知能を活用した車両の品質向上、ロボット、スマートモビリティソリューションなど、様々な新規事業戦略のアドバイスを受けるために、人工知能(AI)の分野の権威である米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のトマソ・ポッジョ(Tomaso A. Poggio)教授とダニエララス(Daniela L. Rus)教授を諮問委員として迎え入れている。
 

次世代車イケイケのヒュンダイ

ヒュンダイは電気自動車や水素自動車にも多くのリソースを投じている。電気自動車では1位テスラ(23.6万台)には大きく及ばずも、今年1~8月に7.4万台を販売し、世界4位へと浮上している。天下のGM(6.1万台)を抑えてのベスト4だ。

電気自動車バッテリーについても、LG化学・SKイノベーション・サムスンSDIと万遍なく付き合い、全方位外交を敷く傍ら、同特許数においても韓国での出願数の半分以上を占めるなど群を抜く。

水素自動車では「ネッソ」(NEXO)を投入し、累計1万台をすでに販売。単一の国で1万台売れた水素自動車は世界初であるという。BTS(防弾少年団)を広告塔に起用し、BTSがノミネートされたグラミー賞の会場にも乗せて行くなど、アピールも本気だ。
 

(写真:BTSが広告塔を務めるヒュンダイの水素自動車「ネッソ」=同社提供)

 
電気自動車もまだ普及していないのに、少々気が早い印象もあるが、この気の早さが韓国企業の長所でもある。走り出してから考えるスタートアップのようなバイタリティが特技だ。しかし、それは短所にもつながる。ヒュンダイの電気自動車「コナEV」は国内外で相次ぐ火災事故が発生し、現在リコール中だ。原因については未だ詳細に解明されていないが、リコールによるソフトウェアのアップデートで更なる不具合が生じるなど、問題が続いている。火災事故が響いたのか販売数も激減した。

もちろん、事業創造においてトライ&エラーは必要コストだろうが、ロボット事業に一抹の不安を感じるのも確かだ。岩場も歩く四足自動車となると、なおさら失敗は許されない。
 

ムン・ジェイン政権は応援?

先月30日、ムン・ジェイン大統領はヒュンダイ自動車を訪れ、「NEXO」など次世代自動車にも試乗した。訪問後に行われたセレモニーでムン大統領は約20兆円規模となる次世代車の支援策を発表した。火災事故でダメージを受けたヒュンダイにとっては一種の「助け舟」と映っただろう。
 

(写真:ヒュンダイ自動車を訪れた場でのセレモニーで国歌を聴く韓国ムン・ジェイン大統領とヒュンダイのジョン・ウィソン会長=青瓦台提供)
 
20兆円の中身には、電気自動車や水素自動車のインフラ拡充、二次電池産業の育成なども含まれており、対象は幅広いのだが、韓国のまともなナショナルメーカーは、事実上ヒュンダイ自動車(起亜含む)のみであり、最も恩恵を受ける企業といっても過言ではない。

韓国自動車協会によると、韓国自動車市場に占めるヒュンダイ自動車のシェア(41.3%)は、傘下の起亜自動車(28.3%)のそれと併せ70%に達する。この(恵まれた)寡占状況こそが、次世代車開発の競争においてもリソースの源となっている。
 
 
(参考記事:「韓国で二次電池特許の出願が活発化…1位ヒュンダイに迫る日本勢、テスラは「スルー」」)
(参考記事:「苦しむヒュンダイに助け舟? 文在寅大統領が約2兆円の支援策発表…水素自動車含む」)
(参考記事:「進むヒュンダイの水素車戦略 中国で普及体制構築…生産から金融まで網羅」)
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 


 
 
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