[特集]韓国企業には「三重苦」? デジタル税や炭素税で負担急増と議論

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[特集]韓国企業には「三重苦」? デジタル税や炭素税で負担急増と議論

 韓国の全経連(全国経済人連合会)は3日、これからのデジタル税‧炭素国境税などの多国籍‧輸出企業を対象とする国際租税の導入についてセミナー行った。以下に概要を掲載する。
 
(参考記事:「[特集]韓国の国際特許出願数が世界4位に…ドイツを抜き日本に迫る」)
 
 全経連(会長ホ・チャンス)は3日、OECD傘下の経済諮問機関BIAC韓国委員会(委員長キム・ユン=サムヤンホールディングス会長)と「デジタル税・炭素税などの国際租税動向と韓国の対応」と銘打ったセミナーを開催し、炭素国境税、デジタル税などの国際租税拡大動向について説明し、対応策を模索した。

 キム・ユンBIAC韓国位委員長は挨拶で、「新型コロナウイルスにより第2次大戦当時よりも多くの財政を支出(※1)するほど、米国・欧州など先進国のGDP比政府支出が急激に増加し、これを埋める税源用意のためのデジタル税・炭素税の議論に弾みがついている」と述べた。また、キム委員長は、「現在の国際動向を共有し、韓国企業の対応の方向を議論したい」とセミナーの意義を説明した。

(※1)第2次大戦当時より多くの財政支出した国:米国、英国、イタリア、ポルトガル、スペイン

法務法人ユルチョンのイ・ギョングン博士は、「デジタル税と炭素国境税はすべて、自国企業ではなく、多国籍・輸出企業が対象の国際租税であり、輸出主導の韓国経済を直撃する」と説明した。また、イ博士は「現在OECD、EUと共に多国間協調に戻ってきた米国など主要なプレーヤーが参加する国際議論の動向を見ると、今年の夏、デジタル税と炭素国境税などのグローバル租税の導入規範(ガイドライン)が確定し、韓国企業の負担が加重されるだろう」と予想した。

実際、昨年7月、デジタル税導入のためのOECD次元による規範づくりが議論されたが、コロナにより、今年の夏まで延期されている状況だ。 EUが’18年に初めて提示した炭素国境税の導入に関しても、今年の7月に規範が確立される予定である。米国の場合、これまでデジタル税交渉に消極的であったトランプ政府とは異なり、バイデン政府は多国間主義への旋回をポリシーとしており、デジタル税交渉に積極的に参加するとみられる。また、バイデン政府は2050年のカーボンニュートラル(※2)を公言しており、米国式の炭素国境税の導入を公約している。

(※2)温室効果ガスの排出量と削減努力を通じた除去量を加えて、炭素純排出量が「0」になる状態

OECDは、デジタル税の規範が確立した場合、世界的に年間1億ドルの税収拡大効果があると分析している。また、炭素国境税施行される場合、EU執行委は、50億〜140億ユーロ、米国は約120億ドルの年間税収増大効果があると予想される。

 ※デジタル税:営業所の所在地に関係なく、海外企業による自国内のデジタル販売に売上税を課す法人税

 ※炭素国境税:自国より二酸化炭素排出量が多い国の輸入製品に対して関税を賦課する制度

 ※炭素税:温暖化防止のための、様々な化石エネルギー使用量に応じて徴収する税金

 ※炭素排出権取引制度(ETS):企業の二酸化炭素排出量を決め、許容値未達分を炭素排出権取引所で売り、超過分を買う制度
 

 炭素国境税は中小企業も対象に

売上高を基準に規模が大きい企業を対象としたデジタル税の導入時、グローバル企業に負担になることが予想される。一方、炭素国境税は、すべての炭素集約商品に課されるという点で、デジタル税より課税対象企業の範囲が広い。特に、韓国は主要産業が製造業であり、主要国に比べ石炭発電の割合が高いことから、より広範に適用される可能性が高い。

法務法人ファウのイ・ソンボム弁護士は、「炭素排出量が多い企業の商品であれば、欧州地域への輸出の際に、炭素国境税の課税対象となり得る」とし、「韓国の場合、特に、自動車、鉄鋼、石油化学などの炭素集約製造業において、大きな打撃があると予想される」と述べた。

最近、EYハニョン(Ernst & Young韓国法人)が発表した報告書(※3)によると、炭素国境税導入時、2023年に韓国企業が、米国やEU、中国に支払わなければならない炭素国境税を約6,100億ウォン(約582億円)になると推定した。 2030年には、これより3倍以上となる1兆8,700億ウォン(約1,785億円)まで増えると予想される。

(※3)報告書「気候変動の規制が韓国の輸出に及ぼす影響」のこと。グリーンピースがEYハニョンに依頼し今年1月に発表
 

 韓国企業は「三重苦」?

法務法人「広場」のユン・ヨンソン顧問(前韓国関税庁長、BIAC韓国委員)の進行で行われたディスカッションでは、国内(韓国)での炭素税導入について話し合われた。専門家は、韓国企業が、海外の炭素国境税の導入の動きのみならず、’15年から施行されている炭素排出権取引制度(ETS)、年内に韓国で導入が予想される炭素税に至るまで、二重・三重の負担を担う懸念があると指摘した。

昨年12月、韓国政府は、「2050カーボンニュートラルの推進戦略」に基づき、カーボンニュートラル生態系への移行をサポートするための「気候対応基金」の造成案を発表している。基金造成のための財源(案)として、炭素税の導入とエネルギー税改編を提示し、韓国での炭素税導入の可能性が高まっている。

一方、企業の二酸化炭素排出量削減のために、過去’15年に導入された排出権取引制度の排出権価格は’15年のトン当たり11,013ウォン(約1,050円)から2020年第3四半期(7~9月)にはトン当たり31,492ウォン(約3,004円)へと、6年間で186%増加した。取引額も’15年の624億ウォン(約60億円)から2020年第3四半期には10,873億ウォン(約1,073億円)へと約17倍急増した。今後、環境規制の強化により排出権価格の上昇傾向が続く場合、関連企業の負担がさらに増すものと思われる。(※円換算はいずれも現在レート)

イ・ギョングン博士はディスカッションにおいて、「企業としては、国内炭素排出権コストの増加に伴う負担と炭素税の導入、さらに輸出企業は間もなく確定される海外の炭素国境税という三重規制に直面するだろう」と述べた。また、「炭素税の導入は、税制の逆進性(※4)および増税に対する抵抗を招く可能性が高く、政府は慎重に進める必要がある」とし、「租税抵抗を克服するために、気候対応基金の合理的使用が重要になるだろう」と明らかにした。

(※4)低所得層が炭素税賦課による波及効果をより多く負担することになる効果

また、「グローバル企業租税財務担当役員協会」のジョン・ジュンフォン会長は、ディスカッションにおいて、炭素税・排出権取引制度の二重規制に対する解決策として、北欧の事例などを挙げた。
 
(参考記事:「[特集]韓国の創業状況と課題(大韓商工会議所報告書)」)
(参考記事:「[特集]韓国の高齢化スピードはOECDで最高水準…20年後は3人に1人が老人に」)
(参考記事:「[特集]韓国企業の多くが雇用や投資の縮小を検討…最近導入の規制法に警戒感露わ」)


 
 
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