[特集]サムスンの中国スマホ市場奪還は可能か?(下)

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[特集]サムスンの中国スマホ市場奪還は可能か?(下)

かつて中国市場で20%近いシェアを誇り堂々の1位だったサムスンのスマートフォンだが、昨年のシェアは0%台にまで落ちたといわれる。しかし、今年サムスンのスマホ司令塔には同社史上最年少のノ・テムン氏が就任。韓国メディアでは、最近発売された「Galaxy Z filp」や「同S20」を前面に、ふたたび中国市場を攻略すると報じられている。本記事ではその可能性について書いた。
(参考記事:「[特集]サムスンの中国スマホ市場奪還は可能か?(上)」)
 
サムスンの中国攻略はいかに?
韓国メディア(主に日刊紙)をみると、サムスンは、今般発売された「Galaxy Z flip(ギャラクシーZフリップ)」と「Galaxy S20(ギャラクシーS20)」を前面に中国市場で再びブレイクするというような論調が目立つ。しかし、筆者は懐疑的だ。

なるほど、フォルダブルフォン(折り畳みスマホ)として技術的優位やファッション性をアピールする前者と、5G対応・1億画素・100倍ズーム・8K対応をアピールする後者は、いずれも新規性やスペック面では見るべきものがある。(※1億画素・100倍ズーム機能は「S20 Ultra」のみ)世界的な注目度も高い。

「Galaxy Z flip」が中国における初回限定セールで売り切れたことや、ファーウェイのフォルダブルフォン「Mate Xs」と比べ機能的に勝る点、さらに中国メディアが「S20」について肯定的な記事を書いたなど、韓国メディアにはそれらしい勝利の根拠が並ぶが、どこか決め手に欠けると筆者は感じている。

少なくとも、「Mate Xs」に対しては、「Galaxy Z flip」は確かに優位に立っているようだ。価格は「Mate Xs」が「Galaxy Z flip」より約2倍高く、米国からの制裁の影響で「Googleアンドロイド」を搭載できないなど、この分野ではサムスンが一旦優位を築いたと言うに足りる。

しかし、フォルダブルフォンの量的普及はまだ先だ。サムスンがフォルダブルフォンをスマホ業界における一種のゲームチェンジャーとして捉えていることは疑いがなく、今年は前年以上の出荷量を予定しているとの報道もあるが、今年すぐに中国市場のシェアを増やすだけの数量にはならない。

市場調査会社ストラテジー・アナリティクス(SA)によると、フォルダブルフォン市場は2025年には1億台に拡大すると予想するが、今年は800万台(全世界)と予想する。そのうち、サムスンが中国で売る販売量は、多く見積もっても300万台ぐらいだろうか。

(参考記事:「「Z Flip」と「Mate Xs」、中韓フォルダブルフォンの比較「Z Flip」と「Mate Xs」、中韓フォルダブルフォンの比較「Z Flip」と「Mate Xs」、中韓フォルダブルフォンの比較」)

出荷量を積み増すなら、5G対応で、かつカメラ性能も1億画素と高スペックの「Galaxy G20」シリーズが、本命になるだろう。しかし、ここでも決め手に欠ける。

たとえば、「S20」シリーズと同時期に発表されたシャオミのフラッグシップモデル「Mi10」シリーズを見ると、「S20」シリーズのインパクトは正直言って霞む。

カメラスペックでは「S20」が勝るが、それ以外の機能では「Mi10」も引けをとらない。1億画素のカメラ・8K動画撮影・5G対応など、消費者の目を引くポイントは抑えつつ、価格は「S20」シリーズより約4割安い。(※価格は「Mi10 Pro」と「S20 Ultra」の比較)

もちろん、カメラ性能と一口にいっても画素数だけで決まるほど単純ではないのだが、一般消費者はそこまで掘り下げて比較するわけではない。よって、サムスンのネームブランドがある欧米ならまだしも、中国の一般消費者にはシャオミの製品がより魅力的に映るはずだ。(※ちなみに「Mi10 Pro」搭載のイメージセンサ―はサムスン製である)

この辺のコスパ勝負は、すでにサムスンがインド市場でシャオミにシェア1位を明け渡したアキレス腱でもある。価格も含めた相対的な優位性がサムスンには欠ける。

 
サムスンの戦略は別のところにある
それでは、サムスンに勝機がないかといえば、そうではない。「今年1年で成果を出す」という前提を変えれば見方は変わる。
冒頭(本特集―上編本特集―上編本特集―上編)で筆者は、ややサラリーマン的な観点から、ノ・テムン新社長が1年目の成果にこだわるようなニュアンスを含ませた。しかし、彼が「1年目の成果」にこだわらなくても良い、つまり基盤のしっかりした社長であれば話は変わってくる。

ノ社長がスマホ事業の司令塔に就任したのは今年の1月20日だが、昨年の(サムスンのスマホ事業の)韓国の記事などを丹念に読むと見えてくるものがある。ノ・テムン氏(当時開発室長)は、これまで自社製造にこだわってきた「Galaxy」のうち、特に中低価格帯(Galaxy A, Galaxy M)については積極的に中国でOEM生産しようと主導した人物であり、昨年だけでも3千万台が、中国のスマホ生産受託企業であるウィンテック(Wingtech, 闻泰)やファチン(Huaqin, 华勤)などで生産されたという。

しかし、そうなると韓国内の部品メーカーなどにしわ寄せが行くことから、サムスン社内でも反対の声が少なくなかったと言われる。つまり、サムスン社内には「OEM派」と「国内生産派」の二つの声があったことになる。

しかし、「OEM派」のノ・テムン氏が、今年になってスマートフォン事業の司令塔に(しかも最年少で)就任したということは、これはサムスングループとして委託生産の方向性にかじを切ったと考えても良いだろう。そういう意味で、ノ・テムン新社長はグループの後押しを受けており、短期的な成果を追う必要もない事になる。なので、中国市場の攻略についても、製品ごとの決戦主義ではなく、より長期的・組織的な観点から占うべきだろう。
 
サムスンの戦略は「中国メーカー」化
サムスンは今年さらにOEM生産の量を増やすといわれており、5千万台から、多くて1億台を中国現地の生産者に任せるといわれている。サムスンが中低価格をOEM生産に回す理由は、端的にコストの問題だ。中国企業に製造コスト競争で勝てないからだ。

また、中国という市場においては、何かと中国企業に対する国からの恩恵があると考えられる。サムスンがやろうとしていることは、一種の「中国メーカー」化ともいえる。中国市場で中国メーカーに勝てず、インドでも中国メーカーに追い上げられるなか、自らも「中国メーカー」化することに活路を見出したと考えられる。中国市場とインド市場は連動している。

その一方で、余ったリソースはフォルダブルフォンなど「新たな武器」に投入する。フォルダブルフォンについては、既存のフラッグシップモデル(Galaxy S、Galaxy Note)製品群とで統廃合するという説も出ている。

今回の「Galaxy Z Flip」や「Galaxy S20」シリーズは、過度期的な製品であり、高性能や先進性を市場に刷り込むための製品であると見るべきだ。多様なフォルダブルフォンを「テスト」しながら、かつ、コストも下げながら、次のゲームチェンジャーを育てていくのではないかと思われる。

そして、韓国内の部品・素材メーカーをここにスライドさせることで、「国内生産派」とのバランス取ることも想定される。(もちろん脱落するメーカーも出てくるはずだが)

新たなフラッグシップ構想に関しては、まだ定かではない部分が多いが、今後、徐々に明らかになっていくだろう。もちろん、「中国メーカー」化と言える程の数量を本当にOEM生産に回すのか、蓋を開けてみないと分からない。しかし、サムスンという企業は、企業戦略(超格差戦略)として、改善ではなく革新を行うことを常態化させている。成長著しい中国勢に勝つためには、これぐらいのドラスティックな一手は打ってきても不自然ではない。売るためにはあらゆる手段を駆使するのがサムスンだ。

(参考記事:「[特集]サムスンの「超格差戦略」とは何か?(上)」)
(参考記事:「[特集]サムスンの「超格差戦略」とは何か?(下)」)
 
 

執筆:イ・ダリョン(編集長)

 
 


 
 
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