世界第二位のDRAMメーカー、SKハイニクス(SK hynix)を擁するSKグループが、半導体素材分野における投資を拡大している。昨年から今年3月まで、SKグループの半導体素材分野の買収および投資件数は計5件となり、実質的な買収案件も含めれば6件に上っている。
(参考記事:「メモリ半導体、韓国勢が世界シェアの7割超占める」)
最近の投資案件
SKグループのSKシルトロン(SK Siltron)は、今年3月、5400億ウォン(約488億円=現在レート)をかけ、米デュポン社の次世代ウエハシリコンカーバイド(SiC)事業の買収を完了した。シリコンカーバイドは次世代半導体素材とされ、既存のシリコン半導体と比較し、いくつかの利点があるとされる。高電圧・高電流・高温下でも動作可能なことが特徴であり、パワー半導体の製造に最適とされる。
SKマテリアルズ(SK Materials)は、昨年11月にハンユケミカル(HANYU CHEMICAL)を400億ウォン(約36億円=現在レート)で買収した。同社は半導体製造に用いられる高純度炭酸ガスなどを製造する。
今年3月にはクムホ石油化学(KUMHO PETROCHEMICAL)の電子材料部門を買収し、フォトレジスト市場に進出することになった。また、SKマテリアルズ自身によるフッ化水素の量産も報じられた。
(参考記事:「SKマテリアルズもフッ化水素量産か?」)
(参考記事:「SKマテリアルズがフォトレジスト事業を買収」)
フォトレジストもフッ化水素も日本の輸出規制品目に挙げられる。 これらはSKハイニクスの半導体事業における競争力防衛を意味する。

今月26日には、SKC社が半導体ブランクマスクを年内量産すると発表している。
(参考記事:「SKCが半導体ブランクマスクを年内量産へSKCが半導体ブランクマスクを年内量産へSKCが半導体ブランクマスクを年内量産へ」)
SKハイニクスは世界2位のDRAMメーカーであり、半導体関連事業への投資は相乗効果も大きいだろう。韓国メディアや証券業界では、SKグループの半導体素材への投資はさらに加速される予想する。
背景と経緯
SKグループがこのように投資を拡大する背景には、昨年の日本による半導体素材の輸出規制(輸出管理強化)があるのは自明だ。同グループに限らず、サムスンやLGも、核心素材の国産化を進めており、韓国政府もそれら流れを支援・推奨している。
しかし、SKグループに関しては、それ以前から同分野の増強を行っている。
SKグループがハイニクス(現SKハイニクス)を買収したのは2012年だ。続く2015年にはOCIマテリアルズ(現SKマテリアルズ)を買収した。OCIマテリアルズは、半導体・ディスプレイ・太陽電池などの製造工程に使用される特殊ガスを製造・販売する企業だった。SKグループ同年11月に4816億ウォン(約510億円=当時レート)で同社を買収し、SKマテリアルズと名前を変えた。SKグループによる素材垂直系列化の開始である。

SKマテリアルズは日本の素材企業であるトリケミカル社と合弁でSKトリケム(SK trichem)を設立。また、昭和電工との間でSK昭和電工(SK Showa Denko)を設立した。
SKグループは2017年にLGシルトロン(現SKシルトロン)を買収した。同年8月、SKグループはLGグループからLGシルトロンの株式51%を6200億ウォン(約600億円=当時レート)で買収した。その後も同社株の購入を続け、現在は100%の株式を保有するとされる。
ファウンドリ部門も強化か
最近では、SKハイニクスがマグナチップ半導体(MagnaChip Semiconductor)の買収にも関わっていると伝えられる。
(参考記事:「マグナチップ半導体の買収、SKハイニクスが主導か?」)
マグナチップ社は、2004年にSKハイニクス(当時ハイニクス半導体)が経営難に陥り売却した非メモリ事業部門が母体の企業である。現在、同社は電力管理チップといったアナログ半導体を主に生産している。
チョソンビズ紙は23日、「国内はマグナチップの清州工場を通じ、中国は無錫SKハイニクスシステムIC工場を介して現地ファブレス(半導体設計専門会社)の需要に対応できるようになる」とし、同社への買収関与はSKハイニクスによるファウンドリ部門強化の一環であるとの見方を伝えている。
半導体事業の利益に依存するSKグループ
SKグループ全体の営業利益のうち、約7割(18年基準)がSKハイニクスの同利益によるものだ。2018年のSKハイニクスの年間営業利益は約20兆ウォン(約2兆円=当時レート)である。SKグループの営業利益が同期間に28兆ウォン(約2.8兆円=当時レート)だった。SKハイニクスはSKグループの中心事業なのだ。そのため、SKグループ全体で半導体事業を支えるという構図になっている。

テシン証券のイ・スビン研究員は、レポートにおいて「SKグループは、グループ内の利益成長を主導するSKハイニクスを支援するため、垂直系列化の一環として、IT素材産業に進出し、総合素材メーカーとしての発展を模索してきた」と分析した。
韓国の電子新聞(etnews)は、垂直系列化は、技術力の強化の手段になるとし、「内在化された事業群が多ければ多いほど、必要な素材を適期に開発することができ、次世代チップ市場に先制的に対応することができる」という業界関係者のコメントを伝え、協力関係が緊密になることで、半導体素子で必要とされる素材や部品を迅速に開発できると分析している。
(以上)