[特集]SoCでクアルコムに完敗のサムスン。ファウンドリには利点も?

半導体 特集

[特集]SoCでクアルコムに完敗のサムスン。ファウンドリには利点も?

 
サムスン電子が生産してきたモバイル向けSoC(統合チップセット=System on Chip)である「Exynos」(エクシノス)が、第一線から脱落しようとしている。クアルコムの「Snapdragon」(スナップドラゴン)に差をつけられたためだ。

SoCとは、通信を担当するモデムチップに、脳の役割をするAP(アプリケーションプロセッサ)やグラフィックスプロセッサ(GPU)などを一つのチップに統合して作られた半導体のことだ。スマートフォン性能を計るうえで、重要な指標になる。

SoCの世界トップは米国のクアルコム(Qualcomm)だ。「Snapdragon」というブランド名で有名なクアルコムのSoCは、全世界の通信チップ市場の約34%を占めている。

「Snapdragon」とは植物のキンギョソウを意味する言葉だ。一方、サムスンの「Exynos」はギリシャ語の「Smart(Exypnos)」と「Green(Prasinos)」を含んだ名称だとされる。

 
これまでの経緯
サムスンはこれまで、ARMの最新マイクロアーキテクチャのライセンスを採用した「Exynos」を開発してきた。サムスンは、自社のスマートフォンである「Galaxy」シーシリーズのほとんどに「Exynos」を搭載していた。ただし、一部の国では、通信規格等の問題で「Galaxy」シリーズにクアルコムの「Snapdragon」を搭載した。

幸いにも、サムスンの「Galaxy」シリーズは世界最大のシェアを占めていたことから、同シリーズに搭載された「Exynos」もSoC市場でのシェアが高かった。2017年第3四半期、モバイルSoC市場において、クアルコム、アップル、メディアテックに続き4位のシェアを記録し、昨年第3四半期には、クアルコム、メディアテックに続き3位にまで上がった。
 

 
しかし、ここに来て、「Exynos」と「Snapdragon」の性能差が目に見えて広がりだし、ついには、サムスン自身のフラッグシップモデルからも外された。サムスンは今月発売されたフラッグシップモデルである「Galaxy S20」シリーズにはクアルコムの最新の「Snapdragon865」を搭載した。(※北米や欧州の一部地域のみ「Exynos990」を搭載)韓国内で販売される同製品にも「Snapdragon865」を搭載したことは、「Exynos」の凋落を象徴する出来事として韓国メディアでも大きく取り上げられた。

両者の最新SoCを比べると、その差は明らかだ。サムスンの最新SoCである「Exynos990」は「Snapdragon865」に対して、AI演算性能や画素数支援で大きく劣り、海外のベンチマークサイトなどでも、性能・効率両面で「Exynos」の方が劣ると容赦なく切り捨てられた。

 
サムスンの競争原理
ちなみに、「Exynos」はサムスン電子内のシステムLSI事業部が開発している。しかし、スマートフォンに関してはIM事業部(無線事業部)が管轄しており、今回のフラッグシップモデルにおける「Exynos」の除外はIM事業部側が決断したといわれている。韓国メディアによると、これに対するシステムLSI事業部側の抵抗は激しかったという。IM事業部の新社長(※本部長に相当)であるノ・テムン氏が決断を押し通した形だ。同氏は、先日開かれたサムスン電子の株主総会においても、「Exynosを自社製品だかといって使用することはない。競争の論理に基づいてチップセットを選択している」と言い切った。

サムスンはスマートフォンで世界の市場シェアトップを走るが、背中を追い上げるファーウェイやシャオミなど中国勢と激烈なシェア争いをしている。自社製品のSoCだからといって重用する余裕がもはや無いのだ。競争に勝つためには、ときに身内にも容赦なく競争原理を働かせる。そこがサムスンという組織の強みでもあるのだろう。

 
SoCからの撤退も?
一部では、これを機にサムスンが「Exynos」の開発を止めるのではないかという見方も出ている。昨年11月にサムスン電子は米国にあるCPU(中央処理装置)の研究部門を閉鎖することにした。Exynosの性能が向上しない状況で、CPUコアを開発するために数百人の高度な研究人材を継続的に採用することは難しいという判断をしたものと分析される。

サムスンが閉鎖を決めた米国のR&D部門は、テキサス州オースチンの「サムスンオースティン研究センター(SARC)」と、カリフォルニア州サンノゼの「アドバンスト・コンピューティングラップ(ACL)」の二か所だ。サムスン側は、CPUの研究を中断するのであって、AP開発は継続的に進行をするという立場を明らかにしており、SoCの開発中止はさすがに無いようだ。しかし、この分野の第一線から後退したのは間違いないだろう。

同社は非メモリ半導体分野でも世界トップを目標にしていただけに、SoCでの躓きは、サムスンにとって不名誉なものだろう。しかし、デメリットばかりではないようだ。先月、同社は、クアルコムの「Snapdragon X60」を受託生産したと発表した。(※台湾TSMCと共同受注)「Snapdragon X60」はクアルコムのSoCに入る5G用モデムチップである。
 

(写真:サムスンのファウンドリラインがある韓国華城工場)

周知のとおり、サムスン電子という会社は、(先に挙げた)チップを作るシステムLSI事業部やスマホを製造するIM事業部以外にも、受託生産を行うファウンドリ部門がある。ファウンドリとは、他社(ファブレス)が設計したチップセットなどを受注生産する事業形態のことであり、サムスンはこの分野でも世界トップを目指している。しかし、同業界1位の台湾TSMCと差が開いていた。生産設備の質(微細工程)では両社に遜色はないのだが、サムスンは自らもチップを開発する企業であることから、発注側であるクアルコムやアップルなどチップ設計会社(ファブレス)にとってはライバルに当たる。そのため、情報管理などの懸念から発注をかけられなかったといわれる。

しかし、今回の「X60」の発注は、その流れが変わったことを意味するかもしれない。サムスンがSoCの第一線から退けば、上で挙げたようなジファブレス側の懸念は解けることになる。ファブレス側にとっても、同程度の発注先は複数あった方が、リードタイムや価格交渉の面で何かと利点は多いだろう。クアルコムによる「X60」のサムスンへの生産発注は、その文脈で捉えることができる。一方で転ぶも、一方で儲ける。複合企業であるサムスンならではの展開だ。
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 
(以上)


 
 
あなたの感想をSNSでシェアする


この記事について、あなたの感想は?
  • 強い関心がある
  • 関心がある
  • どちらでもない
  • 関心がない
  • 全く関心がない